下肢静脈瘤治療
下肢静脈瘤について
下肢静脈瘤は70歳以上の女性では4人中3人にみられる、ごく一般的な病気です
下肢静脈瘤は、静脈の弁が壊れることにより、本来なら心臓にスムーズに還っていくはずの血液が逆流し、脚の静脈に溜まりがちになることで、皮膚の上から静脈が青く蛇行して目立つようになる疾患です。太い静脈の弁が壊れると血液の逆流も多く、大きな静脈瘤が出てきます。長時間の立ち仕事の人や、肥満の人、妊娠を経験する女性、高齢者などによくみられる、最も一般的な静脈疾患です。
- まずは現在の状態を知るところから始まります。お気軽にご相談ください。
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- なんとなく足が重い
- 足がむくんでいる
- よく足がつる
- 症状はないけれども膨らみが気になる
- 細かい青い血管が増えてきた
当院では下肢エコーと脈波検査(足の運動をしていただく検査)で、静脈瘤の程度を調べ、現在どのような状態なのかを説明させていただきます。
下肢静脈瘤には4つのタイプがあります
細い静脈瘤(クモの巣状静脈瘤、網目状静脈瘤、側枝型静脈瘤)
太い静脈には弁不全が無いタイプです。症状は軽いものが多いです。
太い静脈瘤(伏在型静脈瘤)
大伏在静脈・小伏在静脈といった、名前のついた太い静脈に弁不全があるタイプです。
むくみ、だるさ、こむら返り、色素沈着、皮膚潰瘍、といった、うっ滞症状を伴うことがあります。
当院での下肢静脈瘤の治療法
1. 細い静脈瘤の場合
まず日中の弾性ストッキングの着用をおすすめします。サイズと圧迫圧を選択し、着用方法につき説明させていただきます。細い静脈瘤では、根気よく着用することで、ひどくなるのを予防し、目立たなくなることもあります。
- 硬化療法
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症状はあまりないけれども、見た目が気になるという方もたくさんおられます。そんな場合には硬化療法で治療します。硬化剤という特殊な液体(ノリの働きをします)を静脈瘤に注射し、3日間弾性ストッキングで圧迫する方法です。血管がくっつき、血液が流れ込まなくなります。外来で20分ほどで行います。
症状もなく、気にならなければ、多少太目の静脈瘤でも何もしない、という選択肢もあります。
2. 手術療法(太い静脈瘤の場合)
太い静脈に逆流があり、症状との関連がある場合に手術を検討します。当院ではいずれの手術も、局所麻酔での日帰り手術を行っています。
- 結紮術
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ご高齢の方や、逆流範囲の短いものでは、逆流する静脈を1~2か所でしばって、切り離す手術を行います。
- 血管内焼灼術
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傷も小さくてすみ、現在最もよく行われている方法です
逆流している静脈に細い管(カテーテル)を通し、逆流部分全長を内部から熱で焼灼し逆流を止める方法です。結紮術よりも、静脈全長を処理するため再発が少なくなります。
必要のない手術、患者さんの望まない手術は行いません
静脈のふくらみが心配で来院される患者さんでも、症状はなく静脈瘤で困っていない、症状の原因は別のところにある、といった方もけっこうおられます。検査後に説明させていただくと、安心されそのまま帰られる方もたくさんおられます。
静脈をしばったり、焼灼したりすると、その静脈は元には戻りません。そのため、術前にどの静脈のどの部分が悪いのかをしっかり調べて、悪さをしている(逆流している)静脈部分だけを治療することが最も大事です。正常に働いている静脈はきちんと残してやることが必要なのです。
手術の流れ
手術前
外来
手術日を決め、手術の説明、血液検査を行います
手術当日
①手術前の診察
立位で静脈瘤にマーキング(マジックで印をつける)を行います。横になってしまうと静脈瘤がへこんで、部位がわからなくなってしまうからです。
手術用の紙パンツ、病衣に着替えていただきます。
②手術
手術時間は静脈瘤のひどさによりますが、片足で1時間半程度です。
点滴をとって、心電図シール、酸素濃度モニターを身体に着けさせていただきます。
手術は基本的に局所麻酔で行いますが、ご希望があれば鎮静剤を使用して行います。
③手術後
手術が終わったら、そのまま下肢に包帯を巻き、弾性ストッキングで圧迫します。そのまま歩いて帰っていただけますが、圧迫のため、当日はシャワー、入浴はできません。
手術日以降
翌日の受診
翌日、外来を受診していただきます。圧迫をとり、傷の部分に防水テープを貼りますので、シャワーは可能になります。エコー検査で焼灼した血管の状態を見せていただきます。
以後、普段通りの生活を送っていただけますが、日中は弾性ストッキングを着用し、あまり激しい運動は避けてください。
1週間後の受診
1週間後に外来を受診していただき、抜糸を行います。以後入浴は自由です。
1か月後の受診
1か月後にエコーなどでチェックさせていただき、問題がなければ終了です。 (弾性ストッキングの着用も基本的には不要になります)